手紙を書いたら採用された。
国内外のニュース、雑誌や新聞などを見ると最後に「取材:〇〇記者」と書かれていることがある。
放送局や出版社が、記者を現地に派遣。もしくは、現地の人を雇って取材してもらうということも多いようだ。
こんな私だが、20数年前、記者?、いや、どちらかと言うと記者モドキをしていたことがある。
当時、レコーディングの勉強のため、サンフランシスコに住んでいた私。
雑誌「リットーミュージック」に掲載されていた「スタッフ募集」に応募してみた。
といっても、何の経験も技術もない私が、ライターやデザイナーに応募できるわけもない。
でも、海外に住んでいる土地の利が活かせるかも…とよぎった私は…
「編集者、ライター、デザイナーのどれかに応募するわけではないのですが、土地柄を活かした取材協力などをさせていただければ・・・」と、なんとも掴みどころのない手紙を送ってみた。
エアメールを投函した際は、「どう考えても、曖昧過ぎるか~」・・と思ったが、すでに後の祭り。
はるばる東京の出版社に、エアメールが郵送されていくのであった。
後日、出版社の編集長から直々に「じゃぁ、とりあえず取材協力をお願いします。」と連絡が来た。
「こんな曖昧な人物を採用しても大丈夫なのか?」と、ちょっと心配になったのは言うまでもないが、なぜか採用されたのだ。
業務内容は、情報収集。
業務内容は「デジタルネタの収集・アメリカ国内の状況を知らせる」コト。
雑誌の編集に、何が必要かなんてわからなかったが、編集長から「面白そうなデジタルガジェットの情報、カタログ、雑誌をひたすら集めて、東京に送ってください」というミッションが与えられた。
当時は、マルチメディア(文字や音声、動画、静止画などの複数の媒体[メディア]をコンピューターを使用して表現する技術やシステムのこと)と呼ばれた文化の黎明期。
アップル社の展示会、コンピューター関係のイベントに出向き、ひたすらカタログを集める私。
※Apple社の展示会にも足しげく通う私。
こちらは記者モドキになる前に行った展示会の入場券。
新しくデジタルメディア系の雑誌が出版されたと聞けば、即購入、日本へ郵送していた。
その頃「何に使うのかわからない?」「これは何の為にある?」という技術・ソフト・商品が、山ほど登場していた。
展示会の開催期間中、毎日会場に現れて、端から端まで商品のカタログや試供品を、ひたすら集める。
雑誌の取材協力というよりも、ハタから見れば、ちょっとしたカタログ収集マニア。
会場内では、“おかしな収集癖の日本人がいる”と思われていたに違いない。
※当時、ピーター・ガブリエルが制作したCD-ROM。ミュージシャンがソフトを作り始めたのだ。
今に活かされてます。
帰国した時「一度、出版社に寄ってくださいね。」とお声がけをいただき、編集長に会うことができた。
その時、ずっと気になっていたことを尋ねてみた。
なるほど。雑誌の編集長たるもの、時代を先読みして、紙面を作っていかなければならないということだな。と気づきをもらった貴重な経験だ。
※後に、リットーミュージックから発売された雑誌「Quit」の付録。
私の送ったカタログが役立っていたことを祈る。
間もなく三年目に突入する「めでたい思考回路」。
編集長という立場の私だが、時代を先読みして、紙面を作っていく能力は・・・残念ながら無さそうだ。
ただ、当時のカタログ収集経験で得た “アンテナを巡らすくせ” は、とても役にたっている。
あとは、読者の読みたい記事をつくるセンスと文章力を磨くしかない。それが一番むずかしい。
ということで、それはリスに任せることにして、私は、時代の動向を読む。という名目で、山奥から日々インターネットを駆使してアンテナを巡らしている。
そう、ただのネットサーフィンではない。
言い換えれば、これも一つの情報収集なのである。