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オーケストラのコンサート録音の裏側

新型コロナウイルスのワクチン接種が始まったとはいえ、世間はまだまだコロナ禍。

緊急事態宣言も明け、クラシックのコンサートを中心に、ぼちぼち再開しつつあるものの、まだ本来の活気は戻っていない。

そんな中、先日、何年ぶりかオーケストラのコンサート収録のお仕事をいただいた。

コンサートの収録は、幾度となくやらせていただいているが、オーケストラ(以下、オケ)をすることは2年に一度くらいの頻度。

今回、技術的な話は、他のサイトを参照いただくことにして…オーケストラ公演収録の裏側を、私視線でご紹介。

いろいろな制約

オーケストラのコンサートに限らないが、収録となると様々な制約がある。

もっとも大きいのが、時間的な制約。毎回、時間との戦いだ。

コンサートは、主催者がホールを借りている時間内で、搬入・仕込み(準備)~リハーサル~本番~撤収(後片付け)が行われる。

オケとなると、大型楽器の搬入から始まり、その後、演奏者の人数分の椅子を並べ、大量の譜面台を置く作業が必須。

年末恒例の、第九コンサートとなると、合唱団もあわせて100名近い人数がステージに上がるため、舞台上にひな壇を設置するという作業が、さらに加わる。

 

一度に大量の機材を運べる、大型エレベーターはありがたい。

 

ステージ上で準備が行われている間、収録班は、録音機材を設置し、舞台が出来上がるのを待つ。

舞台が出来上がってから、マイクを設置してケーブルをつなぎ、接続が間違いなく出来ているか?ちゃんと信号は来ているか?を、チェック。

この作業を、ゲネプロと呼ばれる最終リハーサルが始まるまでに、行わなければならない。

「収録班…まだちょっと時間がかかります…」なんてことにならないよう、あらかじめスタンドやケーブルに印をつけるなど、時短効率化に努める。

コロナ禍においては、感染症対策という新しい制約も出てきた。

入館時には手指消毒&検温が必須というホールも少なくない。

関係者は、家を出る前に検温し、ホールに着いたら”その日の体温を検温表に記入する”というルールもあった。

先日、訪れたホールは、入口にサーモグラフィーカメラが設置されていた。ちなみに、私はその日、35.7度。ちょいと低め。

 

手指消毒と体温ちぇっく

邪魔にならないよう、雰囲気を壊さないよう。

レコーディングと違って、コンサートはご来場いただくお客様に向けてのもの。

収録マイクが、演奏を見る時、邪魔にならないように設置場所にも配慮が必要。

また、演奏者が指揮を見る視線の妨げになっていないか?マイクスタンドの位置や、高さ等にも気を使う。

たまに演奏者から「前にマイクがあると緊張するわ~。」なんて言われることもあって、「緊張感もバッチリ録音しときます。」と返すと「かなんな~。編集で緊張感は消しといて~。」なんて会話もよくある。

収録するマイクの本数が多いと、床に這うケーブルも多くなる。

出来るだけ移動の妨げにならないよう、引っかからないような経路を考えて、ケーブルを引き回すが、こればっかりは無くすことが出来ない。

 

マイクケーブル集合~

 

「マイクからの信号を直接、高速無線通信網を使って録音機にダイレクトに送信!」なんて時代が来るのを切に願う。

また、第一部と第二部の休憩中、舞台転換があるコンサートも多い。

第二部から、ゲスト演奏家が登場ということも多く、その際は、ゲストの楽器が登場することで、オケの楽器位置も移動が必要となる。

ということは、マイクも移動。

お客様がホール内にいらっしゃる休憩中、ステージに出て作業することになるわけなので、その時はスーツ着用が標準。

 

気持ちは引き締まるんだけど…

 

黒ポロシャツや、黒ジャンバーに比べて、スーツは少々、動きずらいのが難点だが、ステージに登場する人は、技術スタッフであってもスーツ着用がマストというホールもある。

ステージに登場する全ての者、服装からもコンサートの格式を落とさないよう努めるのだ。

何度やっても、やはり緊張します。

コンサート収録は、回数を重ねても、毎回緊張する。

特にオーケストラの収録となると、マイク、録音機材の数も多くなり、結果、チェックする項目が増える。

 

 

もしもの時の為に、バックアップのコンピューターの二台体制で行うことや、無停電装置と呼ばれる装置で急な電圧の変化に備えたりしているものの、トラブルはやはり起こりうるもの。

さすがに、何かしらの災害で全館停電となったら仕方が無い(公演自体も一時中断するだろう)が、そんな場合以外は、「あれがダメな場合は、この作戦で…」と、脳内で様々な想定を繰り広げては準備をして備える。

いつもは「大丈夫。何とかなるさ~♪」精神の私だが、演奏はナマモノ。

その瞬間を逃すともう二度と同じ音は録れない。

そう、演奏者のみならず、録音する私も軽口をたたきながらも、共に緊張しているのである。


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ABOUT ME
Taicho
studio untrapのサウンド担当。美容院の息子に生まれた影響からか。第一印象の人当たりは良し。「早く家に帰りたい」と「大丈夫、何とかなるじゃない~」が口癖。無難かつ合格ラインを見極めて進む『良い塩梅』派。
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