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「コンテスト用音源」の録音について

世の中には、様々なコンクール、コンテスト、オーディションが開催されている。

録音業務に携わっていると、時に、コンテスト提出用の音源の録音を依頼されることがある。

一次審査の応募に必要なもの?

音楽に関するコンクールやコンテスト、オーディションでは、経歴などを明記する書類の他、演奏音源を提出する。

 

 

応募要項を見ると「演奏した音源をCD-Rで提出せよ。」というのが最も多いが、中には「MDやカセットでも受け付けます。」という、昭和~平成の記録メディアにも幅広く対応しているものもあった。

先日、コンテスト用音源の録音を担当させてもらった時のこと。

演奏者の方に「普段は、どんなところで収録されることが多いですか?」とたずねてみたら、「自宅や、レンタル練習室、学校の教室などでICレコーダーを使って録音している。」と教えてもらった。

 

 

最近のICレコーダー(特に音楽用と呼ばれるもの)は、手軽に録音できて音質が良いものも多く、パソコンがあれば、自らCD-Rに焼くこともできるので、応募者自身が作成するのも珍しくない。

収録後、音源を聞いてもらうと、「やっぱり音が違う」と一言。

今回はホールでの録音だった。
ICレコーダーなどによる手軽な録音との違いは、まず、空間とマイク。

吊りマイクを中心に収録するので、やはりホールの空間や響きも感じられる音になる。

そして、もう一つは、演奏者の意気込み。

「収録にお金がかかったとしても良いものを録る!」という気持ちは、程よい緊張と集中を生み、演奏にもしっかり表れている気がする。

今どきの審査方法

今どきの審査としては‥

「演奏を固定カメラで録画。youtubeに限定公開でアップロードしたものを審査する」という令和時代を感じる応募方法もある。

 

 

今や、演奏だけではなく、応募フォーマットに対応できる知識も必要だ。

ビデオカメラ or スマホを保有し、Youtubeに限定公開でアップする、という行程が、スムーズにできることが普通になってきている。

また、録画する際には細かい規定が数々あるので、機器の知識も必要になる。

・未編集で、カメラアングルは固定。顔と手元が常に明確に写っていること。
・ビデオカメラの音声ボリュームを自動的に調節する機能は、演奏の抑揚が無くなるため使用しないこと。
・極端に音量が大きかったり、小さかったり、雑音が入ったりしてはならない。

 

「演奏中の手の動きと音が一致していないと判断した場合は失格!」と、替え玉応募の防止と思われる注意事項まで記載されている。

大抵は、第一次審査は録音/録画されたもの、二次審査は実際に審査員の前で演奏となることが多い。たとえ、替え玉で一次審査をパスしたとしても、二次ですぐにばれると思うのは、私だけだろうか。

いろんなお約束

応募要項には、いろいろなお約束ゴトがある。


・審査楽曲の指定
・演奏曲を選ぶ際の長さ(8分以下で2曲)
・バロック、古典派、ロマン派、近現代と時代別、もしくは、作曲家別に指定された曲群の中から1曲のような指定
・前項の録画規定。‥等。

以前、海外のコンテスト用の音源を録音させてもらった際には、「提出音源は、”編集無しで録音されたものだ”と、録音技師が署名して同封すること。」と書かれていた。

どんな書式で書いていいモノなのか?ネット検索してもまったく分からず・・・

結局「〇月〇日に、曲名:◎◎◎◎を録音しました。2本のマイクを使用しステレオ方式で収録。この音源は、編集を行っていないことを私が証明します。自筆サイン」という書類を英文で作成した。

私の仕事は、この収録音源を手渡すまで。

その後、どんな結果になったのか、合否まではわからない。

私には、できうる限り、良い環境&良い音で収録できるよう努めることしかできないが、未来を左右するかもしれない演奏を記録することは、録音技師ならではの刺激的な瞬間かもしれない。

ABOUT ME
Taicho
studio untrapのサウンド担当。美容院の息子に生まれた影響からか。第一印象の人当たりは良し。「早く家に帰りたい」と「大丈夫、何とかなるじゃない~」が口癖。無難かつ合格ラインを見極めて進む『良い塩梅』派。
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