思考の素

アル・シュミット流ボーカル・楽器録音術

AL SCHMITT ON VOCAL AND INSTRUMENTAL RECORDING TECHNIQUES
アル・シュミット流ボーカル・楽器録音術

ノウハウ活用できる度 ★★☆
掲載されている機材の入手困難度 ★★★
エンジニアレジェン度 ★★★

数々のビッグアーティストと制作をともにしてきたアル・シュミット。その功績から伝説のエンジニアと呼ばれている。

グラミーを23回受賞、150枚以上のゴールド・プラチナディスクを獲得してきた、まさにサウンドエンジニアリングのレジェンドとも言える存在。そのアル・シュミットがこれまで積み重ねてきたレコーディングノウハウを取りまとめた一冊。(Amazon書籍紹介より抜粋)

レジェンド・レコーディングエンジニアAL SCHMITT

グラミー賞を20回以上受賞しているアル・シュミット氏。

まさに歴史を作ってきたエンジニアが、2021年4月26日、91歳で逝去された。

私がエンジニアを志してから、アル・シュミット氏の名前は良く聞いたし、手にするCDのスタッフクレジットを見ると、これまたアル・シュミット氏の名前。

それくらいレコーディングエンジニア界では有名な人だ。

レコーディングエンジニアがグラミー賞を20回受賞!と聞いても、ちょっとピンとこない部分もあるかもしれないが、授賞式は世界最高峰の音楽の祭典と呼ばれ、WOWOWなどで中継されている。

レコード大賞のようなもの?かというと、ちょっと違う。大きな違いと言えば、その選出の方法。

NARAS(ナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス)の会員(音楽産業に携わる人々=現場の人たち)による投票で決定。
※NARASは、現在はThe Recording Academyと名前を変えている。

ノミネート作品を決める投票と、そのノミネート作品の中から受賞作品を決める投票が行われ、受賞作品が決定する。

投票する際の判断は、売上やチャート成績に左右されない『作品のクオリティ』で考える。これが絶対条件。

言わば、業界内の厳しい目で選ばれる賞なのだ。その賞を何度も受賞しているアル・シュミット氏は、まさにレジェンド。

 

1982年に最優秀録音賞を取ったレコード
「TOTO IV」は、アル・シュミット氏の録音

ジャケットの中にも登場

 

日本人アーティストのアルバムにも参加していて、ユーミンの「そしてもう一度夢みるだろう」~「宇宙図書館」のミックスを担当している。

Spotifyでも、彼がレコーディング/ミックスを担当した楽曲を聴くことが出来るが…プレイリスト「アル・シュミット」登録曲数は2000以上、全部聴くのに、いったい何日かかるのだろうか?

レコーディングのヒントもいいけど、体験談もね。

「アル・シュミット流ボーカル・楽器録音術」には、そのタイトルの通り、彼の”録音術”が書かれている。

ただ、「ボーカルマイクは、シンガーのこの位置に置く。」とか、「この楽器は、この距離・この角度で。」というテクニック的な情報や、解説写真は少なめ。

それよりも、彼の経験から語られる体験談やエピソードが面白い。

「何回か録音して聴いてみたものの…一番最初に戻る。ファーストテイクには音楽の持つマジックが詰まっているのだ。」

「録音をミュージシャンとチェックする時、緊張で手の震えが止まらず、ばれないように手をポケットに入れていた。」と、駆け出しのころの話もある。

また「録音が苦手な楽器に襲われる夢を見た。」なんていう話も。

 

まさか…こんな感じで襲ってくる?

 

巨匠といえど、駆け出し時代の精神状態は不安定だったようだ。私が親近感を感じられるのは、特にその部分。

書籍の後半は、愛用のマイクや使用している録音機材の紹介が書かれている。

しかし、機材のお値段が高すぎて、参考にするにはハードルが高い。

なかには、もう製造されていない録音機材もあり、オークションで見つけたとしても、これまた手の届くような価格帯ではないのが残念。

とはいえ、レジェンド・レコーディングエンジニアが、その手法やヒントを紹介している一冊。

巨匠の仕事に興味がある方、その秘密を垣間見たい方にとっては、楽しめる一冊だと思う。

ただし…掲載されている機材は、ムッチャ高いよ~♪

 


 

<Pick Up!>

Youtubeには、彼のレコーディングテクニックを紹介した動画も多く上がっています。そちらも要チェック。

 

ABOUT ME
Taicho
studio untrapのサウンド担当。美容院の息子に生まれた影響からか。第一印象の人当たりは良し。「早く家に帰りたい」と「大丈夫、何とかなるじゃない~」が口癖。無難かつ合格ラインを見極めて進む『良い塩梅』派。
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