工夫満載の感染予防対策
2020年春に中止や延期となったコンサートも、少しづつ再開の兆しが見られるようになった。
開催にあたりマストとなるのが、感染予防対策。
ソーシャルディスタンスを保ったまま、どうすれば開催できるか。これが、なかなか大変だ。
ホールからの情報発信や感染予防のガイドラインを見るたび、運営の苦悩を想像しているる。
そんな中、ちょっと楽しい試みを発見。
岡山シンフォニーホールでは、音楽家達から指定席の予約が入っているようだ。
べートーベン様やバッハ様に加え、最近は口コミの影響から、シューベルト様とハイドン様も予約が入ったらしい。
粋なアイデアによる楽しいソーシャルディスタンス。
また、西宮市のフレンテホールでは、「アルコール除菌液をタレビン(お弁当によくある醤油などを入れる容器)にいれて配布」されている。
工夫をこらしたホールスタッフさんの取り組みが、各地で行われている。
また、コンサート・舞台関係の業界にも、公演再開にあたってのガイドラインが存在する。
ガイドラインの元になっているものは、厚生労働省、専門家会議、それ以外の感染症対策の専門家の方々が監修によるものだ。
●ソーシャルディスタンスの確保。
●使用が共有される物の消毒の徹底。
●舞台準備/撤収、リハーサル、公演中/後の感染拡大防止策。
監修元が同じなので、共通している内容も多い。
ちょっと気になる対策項目
ガイドラインの中には、ちょっと気になる項目がある。例えば・・・
ブラボー禁止令
クラシックコンサートで、演奏終了時に飛び交う「ブラボー!」。
感染防止ガイドラインには「ブラボー等の声援は控え、拍手のみとしていただくようお客様に周知する。」と書かれている。(クラシック音楽公演運営推進協議会・ガイドラインから)
飛沫感染防止の為、大きな声で叫ぶのは禁止。開演前の注意アナウンスにも加わるかもしれない。
お控えください令
劇場、会館等のガイドラインの中の項目。「花束、プレゼント、差し入れ等は控えていただく。」とある。
ウイルスの付着の可能性がある物品を避ける、という狙いからだと思われる。
ちなみに「入待ち・出待ちもお控えください」とある。楽屋口においても、三密は禁止。
物販はビニールシート&キャッシュレスお願い令
世の中のスーパーや小売店で日常風景となったアクリル板やビニールシートと会計待ちの列におけるソーシャルディスタンス。そして、キャッシュレス。
コンサートの物品販売も、同様のシステム導入が推奨されている。
小規模なコンサートにおいて、キャッシュレス導入や、ビニールシートの準備と設置、販売スペースの確保・人員配置の工夫などは、予算的にも物理的にも大変だ。
休憩時間も、必要以上に会話はできない。ドリンクの提供もなし。
コンサートは、ただシンプルに‥
「音を楽しむ」時間になっていくかもしれない。
音響の感染防止ガイドライン
私が担当している音響に関しても、ガイドラインに記載がある。
たとえば‥
●マイクロフォンなど複数名が使用する機材のこまめな消毒。
●会場備え付けの楽器(ピアノ等)のこまめな消毒。
ガイドラインには、「マイクの種類別の消毒方法」まで書かれているものもある。(劇場演出空間技術協会・感染防止の為の安全手帳2020)
「ワイヤレスマイク使用の注意点」では…
●1つのセットを複数の出演者で使い回す場合には、合間に消毒作業を行う。
ワイヤレスマイク本数が限られている場合、使いまわすことは日常的にある。
式典などでよく見かけるご挨拶。
演台のマイクを使って、挨拶する方が順番に変わるような場合、どうしたらよいものか。
「只今、ワイヤレスマイクの消毒作業を行っておりますので、少々お待ちください。」なんて、マイク消毒待ちの光景も想像してみる。
また「会場備え付けの楽器(ピアノ等)のこまめな消毒」が、これまた難しい。
ピアノは、アルコール消毒液(アルコール入り除菌シートなどを含む)の使用はNG。
鍵盤表面のひび割れの原因になったり、ピアノ内部に影響を及ぼすおそれがあるので、使用禁止だ。(YAMAHA・ピアノ除菌の方法より)
一台のピアノで代わる代わる演奏をしていくピアノ発表会などは、対策が悩ましい。
演奏前に手指の消毒をするのがベストかもしれないが、少しでも水分が残っていると、演奏にもピアノにも影響がある。
とすれば、演奏後、手洗い直行がベストか。
それとも、演奏予定時間5分前に消毒し、お医者さんの手術よろしく手が周りに触れないようにすればいいのか。
なんにしても、周知徹底が難しそうだ。
会場内外、ステージ、舞台裏で繰り広げられるソーシャルディスタンス&消毒の光景。
今後も「新しいコンサート運営様式」として、新ルールがどんどん作られていくのかもしれない。