二十数年前、ゲーム開発会社のサウンド部署に就職した。
人手不足の為、入社直後1カ月間アシスタント後、効果音制作者としてデビュー。それ以降、数々の効果音制作を行ってきた。
今は、レトロゲームと称されるアーケードゲーム、スーパーファミコン、PlayStation、オンラインゲーム、ポータブルゲーム機、電子おもちゃなど…もう無くなってしまった機種なども多数ある。
こんな音が欲しいのですが…
ゲーム開発の会社にいたころは、ゲーム企画者から発注された効果音を作成していた。
例えば、「バレーボールのアタック音」「バスケットボールのドリブル音」「サッカーのシュート音」など。
具体的にわかるような音はイメージしやすいのだが、中には解読が難しいものもあった。
発注:「宇宙空間で高級車がミサイルで派手に破壊される音」
そもそも空気のない宇宙空間で音がするのか?や、なぜ高級車なのか?は、ちょっとおいといて…「高級車」「ミサイル」「派手に破壊」から音のイメージを膨らませる。
「高級車もミサイルも素材は金属かな。窓ガラスも飛び散るだろうから、ちょっとガラスの割れる音も混ぜるか?派手に破壊されるのならちょっと余韻がある音にしようか…」なんていう具合だ。
以前、劇団から効果音作成の依頼があったのは‥
依頼:「雨の音」
雨の音といっても、シトシト降るタイプから、ザーザー降るタイプ、はたまた暴風雨まで多彩。
その時は台本を読み、季節はいつ頃か?場面は屋内か野外か?雨が落ちるのは道路か池か?などを考えて、雨の音を用意した。
※効果音素材CDというものもある。
効果音作成に欠かせないソフトウエア
一口に効果音といっても、皮靴を履いてアスファルトの道路を歩く音を録音しただけの「足音」から、いろいろな音を組み合わせたり、電子楽器で作ったりする「ゴムゴムのなんちゃら~」までイロイロ。
実際に録音する場合もあれば、シンセサイザーなどで作成するときもある。
また、音を組み合わせて効果音を作る場合、相棒になるのが波形編集ソフトというもの。
有名なソフトウエアにSoundforgeというものがあり、音を切り貼りする・二つの音を一つに混ぜる・音程を変える・残響を足すなんていう芸当ができる。
例えば、前出の「サッカーのシュート音」。
サッカーボールを蹴るだけの音だとインパクトが薄いなんて時には、このSoundforgeで、サッカーボールを蹴る音に、ミサイルの発射音を混ぜ、残響を足したら、「ドギュ~~~ン」という感じで超ド派手なシュート音の出来上がりである。
私が効果音を作成する際には、このソフトが必須。
Ver.4から使い始めて、今ではVer.12。私の経歴は、このソフトと共にありだ。
※歴代のSoundforge。以前は、まぁまぁの値段がしてたが、最近では77%OFFセールなんて時もある。
この効果音、実は…
実際に録音した音を素材として‥
音を調整したり、何かを加えたりして、効果音を作成することも多い。
昔、井戸の底に向かっていろいろな形をしたブロックが上下左右から落ちてきて、上手く一列並べることが出来ると消すことが出来るなんていうゲームの効果音を作ったことがある。
その時のゲーム企画者からきた、効果音発注依頼は‥
発注:「巨大な岩と岩が当たった重厚な音」
「重機を使って、巨大な岩と岩を当てた音を録音する」ことなんてことは出来ないので、何かしら近いものを探した。
地元の河原で石を探してみたが、岩と呼べるようなものは無い。
水切り遊びが出来そうな程度のものしかなく、ちょっと大きめの石と石を当ててみたが、「カチっ」というくらい。火打石程度の音しか出ない。
これは困ったぞと思っていたら、実家でいいものを発見した…
漬物石である。実家では祖母が漬物を漬けていて、大きめの漬物石どうしを当ててみたら、ちょうど良い感じの音がした。
早速、録音。音質を音声編集ソフトで調整するとハイ出来上がりである。ゲームに組み込んでもらって、実際遊んでもらったら「なかなか良い。岩の感じが出ている!」と感想をもらった。
「どうやって岩と岩が当たる音を作ったの?」と尋ねられたが、種明かしをして”岩の感じ”が消えてしまうのも残念な気がして「まぁ、また機会があれば~種明かしします。」と言っておいた。
結局、その機会は訪れず‥種明かしはもう25年も塩漬けされたままである。