私の青年期、音楽を録音するものと言えばカセットテープ。高校生の頃に発売されたSONYのWALKMANは、一大ブームを巻き起こした。
友人のほとんどが音楽を録音するのにカセットテープを使っていたと思うが、中には、「カセットテープよりも音が良い。」ということで、オープンリールの録音機を所有しているものもいた。
※ウォークマンといえば猿のCM?
オープンリールテープってご存知?
オープンリールテープとは、どんなものかというと・・
テープを巻いたリールが単体で存在する形態をいう。カートリッジ方式(カセットテープ等)と異なり、リールが剥き出しになっており、利用者が直接リールからテープを引き出して録音機に装着、あるいは脱着するもの。-Wikipediaより抜粋-
※オープンリールテープと一口に言っても、太さ・長さ・メーカー等、様々です。
テープがむき出しの為、埃の影響を受けやすく、手でベタベタとテープを触ったりしない等、取り扱いには気をつける。
また、テープが伸びたり、カビが生えるのを避けるために、高温多湿場所で保存しないなど注意が必要だ。
カセットテープに比べて、少しデリケートなテープなのだ。
数十年前の音源を復活させる
先日、知り合いを通じて「オープンリールテープに録音されたコンサート音源をCDにしたい。」という相談を受けた。
お話を聞いてみたところ、「音源は数十年前のもので、コンサートを収録したものだと思うが、聴くことが出来ないので内容までは分からない。」とのことだった。
テープの状態が悪い(昆布のようにヨレヨレ・折れ曲がり・くっついてしまっていて離れない・カビがビッシリ等)と、再生すること自体が困難になるので、ひとまずテープを確認させてもらうことにした。
※保存状態が悪いと、こんな風に折れ曲がったり・・・
いざ、テープを確認させてもらうと、半世紀前のモノにしては、保存状態も良好。
ただ、一部にカビが見られるのでクリーニングは必要かなといった状態。
うちのスタジオには、オープンリールテープレコーダーはないので、レンタルして音源化することも考えたが・・・ネットで情報収集中に見つけたのが、アナログテープのデジタル化サービス。
餅は餅屋のTEAC(ティアック)へお願い
「オープンリールテープ」「デジタル化」で、ネット検索していると、音響機器のメーカーのTEACが、アナログテープのデジタル化サービスを行っているのを発見した。
それが、このティアックカスタマーソリューションズ株式会社の、音声ダビングサービスである。
TEAC(株式会社ティアック)というのは、60年以上の歴史を持つオーディオ・レコーディング機器などの製品を開発・販売しているメーカーだ。
うちのスタジオでも、TEAC製のカセットデッキや、CDレコーダーなどを所有している。
そんな専門メーカーがやっているサービス…ここは、餅は餅屋に頼むのに越したことは無いとお願いすることにした。
テープ用の乾燥機も持ってます。
お願いするにあたって、テープの状態を伝えて相談してみた。
すると「テープ走行が不能なほどのカビが発生していたり、劣化が激しい場合別途オプション料金が必要な場合がある。特殊な処理が必要と判断した場合は、事前にご連絡致します。」との返答があった。
※白く線上になっているのは、カビ?
ウエブサイトにも、『カビやベタつきが見られるような状態の悪いテープ等は、熱処理等を行う事で安定した再生が可能となる場合があり、そういう場合に使用するための温度調整が可能な大型の乾燥機(恒温槽)を所有している。』とある。
言ってみれば「古いオープンリールテープをカラっとさせて、デジタル化する。」そんな工程も担ってくれるのだ。やはりオープンリールの餅屋である。
半世紀前の音、復活?!
お願いしたオープンリールテープは、約一ケ月の時を経て戻ってきた。
コメントには「カビ取りクリーニングは行ったが、保存状態も比較的良かった。音質も良好で、特に問題は無かった。」とあり、音源のデジタル化に成功。
早速聴いてみると、そのコメントの通り、半世紀前の録音と思えないクリアが存在していた。
※半世紀前の音源が、復活!
オープンリールテープは、50年以上にわたる長期間の保存が可能な記録メディアだと言われている。
といっても、温度一定、湿度も管理された、いわゆるテープに良い環境にて長期保存・保管するのはムズカシイ。
大切に大切に…押入れの奥深くで保管していた為、通気性が悪く、カビが生えてしまっていたというのは、よくある話だ。
また、色々な方と話をしていると、オープンリールテープを持っている方は意外に多かったりする。
そして、その大半が “どうしていいかわからない” ” いつかはCDにしたいのだけど…”と思っている様子。
今回ご相談いただいた方は、復活した思い出のコンサート音源をCDに複製して、ゆかりのある方に配られることになった。
約50年前の演奏が、デジタル化によって共有され、いつでも聴くことができるようになったのだ。
お手元に『古いオープンリールテープ』をお持ちならば、思い出にカビが生える前に、デジタル化を考えてみてはいかがでしょうか。