インターネットのNewsサイトを見ていたら、こんな記事が…
「山梨県知事選で、目の不自由な人へ配る音声版の選挙公報としてカセットテープが配布された」というもの。
コメントを見ていると「今どき、カセット?」「再生する機械が無い」等という意見も多かった。
カセットテープ世代です。
私も幼少期~青春時代は、カセットテープと共に歴史を歩んだといっても過言ではない。
小学生の頃。
母親が美容の講習会(うち、実家が美容院です。)を録音するために、ハンディタイプのカセットレコーダーをもっていた。持っているのならば活用せねばと、美容の講習会だけでなく、従妹のピアノ演奏なども録音して楽しんでいた。
その頃はカセットテープ一本が1,100円。当時、かなりの高級品。
その頃、録音機が幾らしたかは知らないが、よくまぁそんな機械を持っていたものである。SONYウォークマンが、この世に出る何年も前のことだ。
高校生になり、自分のオーディオ機器を手に入れた後は、レコードから好きな曲を集めてカセットに録音。自分のベスト盤を作って楽しむようになった。
その後、SONYのウォークマンが発売され、カセットテープを持ち歩く時代になる。運転免許を取得し車を運転するようになった時、もちろん、カーステレオはまだカセットテープだった。
1980年代後半もカセット全盛時代は続きます
ノーマル・クローム・メタル。
当時は、いろいろな種類のカセットテープが売り出されて、録音する音楽によって使い分ける方も多かった。
1982年にCDが登場したが、まだまだカセットは全盛期。
※下のメガネのようなカセットテープはメタルテープというもの。
音質もカセットの中では一番。
1990年代初頭に行った音響機器の展示会では、TDK(オーディオ製品製造の会社)の展示ブースで「今からCD、もしくは、そのCDからカセットに録音したものを流します。どちらがCDで、どちらがカセットか当ててみてください。当たった方には粗品をプレゼント!」という、カセットの高音質をアピールしたイベントもあった。
もちろん、外しましたけど…。それぐらい、カセットの音質向上にテクノロジーが投入された時代だったのだ。
カセットテープは時代遅れ?
今でこそ、再生できる機械も少なくなり、カセットテープはもう使われていないかというと、実はそうではない。
演歌のカセットテープは、まだ販売され続けているし、田舎のカラオケ大会の伴奏は、まだまだカセットテープが現役と聞く。
※パッケージには「カラオケに」と表記あり。
何年か前にお手伝いした野外イベントで、ダンス用のBGM音源としてカセットテープを持参され手渡された時は、少々戸惑った。
カセットテープを再生する準備はなかったため、どうしたものかと対応策を練っていたら、他のメンバーがCDを持参してくださり事なきを得たものの、カセットテープもまだまだ現役なのだと実感した。
CD、音楽配信とデジタルミュージック時代の現代。カセットテープは時代遅れかというとそうではない。
アメリカでは、カセットテープ人気が再燃しているというのだ。
映画のサントラからメジャーなミュージシャンもまでも作品をカセットテープでリリースしているとか。
リアルタイムでカセットテープを知らない世代にとって、デジタルにはないアナログ的な音質、そして、コンパクトさといった理由が購買につながっているらしい。
一周回って逆に “新しいアイテム” になっているようだ。
以前、うちのスタジオに来たレコーディングエンジニアのF君(30代)が、スタジオに転がっていたカセットテープを見るや否や、これを録音に使いたいと言い出した。
F君がいうには「カセットに録音することでアナログらしい質感を出すことが出来る」、専門的に言うと「テープコンプが効き、それによって迫力が増す」ということらしい。
収録現場を見ていなかったので、どのくらい迫力が増したかは不明だが、カセットテープはその才能をいかんなく発揮したはず。
デジタルの時代。
カセットは、これからどんな存在となり、どんな音を世に送りだしていくのだろう。
もしかしたら、カセットテープが伸びた時のお経のような音質も、びろろーんとテープが飛び出して小指でくるくる巻く動作も、全て若者には、新しい発見となるのかもしれない。
カセットは、世代を超えてゆくのだ。