2020年6月の半ば「有料配信コンサートを見るかどうか」を投稿して、早くも一カ月以上が経過した。
新型コロナウイルス感染者が増える一方、イベントも徐々に開催の兆し。
開催に関する感染防止指針の中には「感染状況を踏まえて、判断する。」という注意書きはあるものの、エンタメ業界もコンサート・イベント再開に向けて少しづつ動き出している。
半年ぶりのオフラインコンサート
先日、京都市内のお寺で、知り合いのアーティストさんが出演されるコンサートがあると知り、思い立ってふらり出向いてみた。
そのお寺は、340年の歴史を持つ京都市左京区鹿ヶ谷にある法然院。
会場は、お寺の庫裏玄関(くりげんかん)。コンサートが出来る玄関?・・どんな場所か楽しみである。
周辺のコインパーキングへ車を駐車し、小雨の中、参道の坂を上がっていく。
入口の坂道を歩く隊長
ちょっと湿気を帯びた空気を鼻から吸いこみながら、境内の手入れされた木々を見ていると、心なしか葉っぱの緑も濃く感じられる。
苔もシダも美しい
開演10分前に庫裏玄関に到着。
会場前で「こちらをお願いします。」と、アルコールジェルを差し出され、手指の消毒。この一連の流れも、すっかり日常に馴染んでいる。
庫裏玄関に足を踏み入れてみると、天井が高くて、見上げると立派な梁。
梁のある天井って好き
ステージとなる場所には…衝立「一に掃除 二に勤行 三に学問」の文字。
鐘とスピーカーが並ぶ空間
客席には、ソーシャルディスタンスを加味して、椅子が設置されている。さらに十分な換気を行う為、何台かの扇風機が首を振り振り稼働中。
観客は皆マスク着用で会話も少なく、開演時間までの静けさが心地いい。
Go To お寺コンサート
住職のご挨拶をきっかけに、コンサートが開演。
このコンサートは「悲願会(ひがんえ)」という東日本大震災のチャリティイベント。
第19回「悲願会」
~一切衆生の成佛を信じ、被災者の悲しみに心を重ね、被災地の復興に関わる決意を表し、各々が今後の生き方や社会のしくみ作りについて考える2日間~
法要やコンサート、ジャンルもジャズ・ポップス・インド舞踊など、幅広いジャンルのステージが行われていた。
私達が足を運んだのは、ウクレレ/ギターリスト岡部あきらさんのステージ。
ウクレレ 岡部昭さん / ギター 掛田慶次郎さん
会場のお客様は、約20人弱。ゆったりとした空間に、優しいウクレレとギターの音色が響き広がる。
コンサートが始まって間もなく、入り口扉が取り外された。
ガタゴトという音がしたので目をやると、立ち見のお客様越しに、境内の砂利と木々の緑。少し雨も降っている。
外との大きな仕切りが無くなった為か、会場は、ますます外の自然と一体化した。
吹き込んでくるちょっと湿った匂いも、演出のようで楽しい。お寺‥雨‥ギター‥これはなかなか乙である。
途中、ゲストのヴォーカリストが加わって演奏された「prayer」という曲。
ボーカル 田中志保さん
東日本大震災の後に作られた楽曲「prayer」にしっとり聞き入って被災地へ想いを寄せたり、次は‥パーカッションが加わった「イパネマの娘」で体を揺らしてみたり。
久々に、演奏で変わる空気を感じられた気がした。
途中、入り口横の砂利道を車が走る音に意識が向いたり、MC中、演者にお客様が急に話しかけて会話に発展するのも、ライブならではのご愛嬌。
聴く以外の情報もコンサートの一部
「やっぱりコンサートはオフラインがいいね。」
帰り道の車中は、そんな話をしていた。
オンラインのコンサートでも演奏は聞けるけど、受け取る情報量には大きな違いがある。
音の響きはもちろんだが、距離感というか、空間の魅力が確かにあって、そこに、匂いや温度といった質感が存在している。
また、自分の見たい方向、聴きたい音の方向へ、顔を向けられる自由さがいい。
そんな当たり前だったはずのことを、2020年、まざまざと感じることになった。
境内で出会った、木の根の歴史
オンラインは、すぐに繋がれる反面、日常にもすぐ戻れる。
ディスプレイで平面的に見る世界では、横に視線を向けると日常生活があって、便利な反面、余韻の持続力は低い。
オンラインコンサートでは、受け取る情報量が限られるけれど、オフラインでは、その場に無数に散らばる情報を自分で選んで感じていると気づいた。
同じ空間で、演奏を見ながら音を聴く。
コンサートで得られる体感は、これからもっと特別になっていきそうだ。
道中の出会いもコンサートの記憶になるから
< Pick up ★>
以前に「思考の素」で紹介していた、岡部さんのCD。やっぱ名盤です♪