デザインの依頼が怖かった
ひょんなことからはじめた、デザインのしごと。(→デザイナーは無茶ぶりから)
誰に習ったわけでもなく、本を読みながら独学でなんとかやってきて約8年。
平日はデザインの仕事、土日はコンサート業務が多いので、ずっとデザイン業に向き合っているわけではいし、依頼は知り合いからの紹介が多いので、8年といえど、そこらのデザイナーさんより制作数はうんと少ない。
それでも、依頼がなくなることもなく、最近はWEB制作も増えてきた。なんともありがたいと感謝しながら、忙しい毎日を嬉しく思う。
そもそも、私よりも技術も経験も勝るデザイナーさんなんて、山ほどいる。
はじめの頃は、依頼をもらうことが嬉しくありながら、ちゃんと要望に応えられるかが怖かった。
特に、印刷部数が多い、締切まで時間がないものは、間違ったら‥失敗したら‥どうしようと怖さが更に倍増。
私に依頼してくれたという嬉しさよりも怖さが勝って、もっとちゃんとしたデザイナーに頼んだらいいのに‥とまで思う時もあった。
でも結局、やるしかない。
逃げることもできないし、誰も変わりはいない。
腹をくくって、自分にできるだけのことを精一杯やる。
そうやって続けてきて8年経ち‥気づいたことがある。
下支えした3つのコト
美術の成績もいたって普通だったし、デザインに関する知識や技術を習ったこともない。
そんな何でもない私だから、自分にできることだけはしっかりやろうと思った。
簡単に言えば、連絡・約束・説明。
連絡は欠かさず、メールはできるだけ早く返信する。
約束の期日は守る。
細やかに説明する。
私がデザインの仕事をもらい続けてこれた理由は、このいたって普通のコトが大きいと思う。
それに気づいたのは「いつも丁寧な仕事で‥」という表現を度々聞くようになったから。
そう言ってもらえるのは嬉しい。
でも、“丁寧”は、デザインだけを示している雰囲気ではなく、一体、何が「丁寧」と思ってもらえているのか、ずっとわからなかった。
丁寧と感じる要素
ある日、印刷について、連絡をした時のこと。
なかなか会って話をすることは難しいので、通常メールでの連絡が多い。
デザインが確定し校正が終わると、印刷における「用紙・部数・納期・料金」について連絡をして、最終決定する。
インターネットで印刷を発注する場合、長期間(日数をかける)ほど安く、短期間で印刷すると印刷代が高くなる会社が多い。
余裕があって10日ほどかけて印刷する時と、急いでいて1日しか印刷にかけられない時では、金額が何倍も変わってくる。
私は、いつも納期や部数における料金の価格差をメールで連絡し、依頼主の方に選んでもらうようにしている。
1週間後に納品予定だったけど、3日後に会う人に渡せるなら料金が高くなっても急ぎで印刷してほしい、2000部予定だったけど安くできそうだから2300部にしたい、と急遽変更になることもあるからだ。
依頼した当初から状況は日々変わるし、自分だったら知らせてくれると嬉しい。そう思って、いつも料金を調べて連絡していたら‥
「これまで、こんなに詳細に説明してくれることなんてなかった。いつも丁寧にありがとう。」
まさかの一言。
こんなところに「丁寧」と感じるポイントがあったのかと驚いた。
面倒くさがりが生んだ効率化
いつも丁寧なしごと。
そんな嬉しい表現をしてもらえるようになったのは、私の「面倒くさがり」が回り回った結果かもしれない。
私は、メールの返信が遅い、連絡ができない、伝える努力を怠ることがキライだ。
でも、結構な割合でルーズな人がいる。仕事上でも、度々に出会う。
その都度、嫌な気分になるけれど、相手に「こんな思いはさせたくないな」と再確認するポイントになった、と気分を入れ替えつつ、どうしたら早く連絡がもらえるかを考えた。
行き着いたのは、相手に「選んでもらう」ことだ。
さっきの印刷におけるメールやりとり。
「5日で印刷したらいくらになりますか?」
「じゃあ3日だったら?」
「やっぱり、9日の場合も教えてもらえます?」
「1000部と1200部でいくら変わりますか?」
と、何度もメールをやりとりしたら、双方の手間がかかる。
最初から選択肢を複数提示することによって、明確に「料金・納期・部数」を比較検討してもらえるし、1回のメールやりとりですむ場合が多く、相手も返答が短くてすむ。
じゃあ、納品先と納品希望日/時間帯なども一緒に聞いてみようと試みると、一度に複数の質問は、いくつかの答えが返ってこない場合もあった。
メールが苦手な人もいるので、一問一答形式のほうが素早くやりとりできると判断したら、短く何度もメールをする。
「段取り上手」「丁寧」と言ってもらえることが多いけれど、私は「二度手間」「非効率」なことが嫌で、どうしたらスムーズに気持ちよく進められるかを考えていただけかもしれない。
単に、面倒くさがりの先回り。
それはまた、特別なコトではなく、いたって普通なコトだった。
デザインの仕事をなんとかやり遂げようと思う裏側でやってきた普通のコトが、“丁寧”という表現で返ってきたことは嬉しい。
正直、「デザインの期待値」よりも「丁寧さ」のほうが、依頼する理由となっていた時もあったと思う。
デザイナー経験0を下支えしたのは、面倒くさがりの先回りから生まれた「丁寧さ」なんて‥少しおかしいけれど、私らしいかもしれない。
いやいや、めんどくさがりではなく、効率よく流れを組み立てるのが上手なんだと思いますよ。
ありがとうございます。
ある時、前もって道筋を整えるのは、面倒くさがりが追求した効率化かも?と思いました。とはいえ、一筋縄ではいかず‥イメージを共有する表現力や説明力、予定通りスケジュールを進められる導きも含めて、勉強はつづきます^^