パッチ盤とは
レコーディングスタジオでは、音響卓の横にパッチ盤というものがある。
パッチ盤というのは、音響機器の接続を素早く行ったり、配線の繋ぎ変えを容易にするための設備。
「その機械からきた信号を、あの機械を通した後に、この機械に入るようにつなぐ」なんていうことが出来るのだ。
※パッチ盤、左側の丸い集団です。
パッチ盤にはいろんなタイプがあります。
今でこそ、普通に使っているが、最初に目にしたときは、何のためにこんなにいっぱい穴があいたものがあるのか?と不思議だった。
配線できない男子
友人と話をしていると「うちの旦那…TV裏の配線がうまく出来ない…」なんて話を聞くことがある。
「取り扱い説明書に書いてある通りしたらいいだけやで。」なんていう話は通じず。「うちの旦那、機械が苦手やし。そういうの無理やねん。」という、よくわからない会話が続く。
はたまた別の友人によると、TVと地デジ、BS・CSアンテナ、HDDレコーダーの接続は出来るが、ことパソコン関連になったとたん、周辺機器をどう繋いでいいのかわからないという話も小耳に挟む。
家電の結線と同じようなものだと思うが、パソコン関連機器に関しては、苦手意識&拒否反応が強い人も多いようだ。
そんな影響からか、知人友人から『 機械 接続 配線 』といえば『有川君』とはじき出されて連絡がくる。一家に一台『有川君』と呼ばれることもあり、機械に強いことで少しだけ得?をしている。
昔から機械を触るのはキライじゃなかったし、苦手意識もない。むしろ、ふむふむ~と仕組みや構造を考えるのが楽しかった。
悲しき推薦状
ケーブルをつないだり、その繋がりを頭の中で組み立て整理しながら考えることは、私にとっては別に普通のこと。
でも、ある時専門学校の先生から、それも特技の一つだと教えてもらった。学校を卒業する時、スタジオへの就職等で活用できる「推薦状」なるものを書いてもらった時のコト。
そこには「Masatoについては、”信号経路の理解力”が優れていることが最も印象深かった。」とあった。
※信号経路の理解力=どこから信号が入ってきて、どこを通って、どう流れていくかを理解する力
一瞬喜んだものの、信号経路の理解力ってなんだ?
「”サウンドに対するセンスがある”とか、”音楽に対する理解が深い”というような、サウンドエンジニアの表立った能力じゃないのかよ~~っ」と、ちょっと残念に思った私。
ただ、外人の先生が言うくらいなので”信号回路の理解力”というのは、インターナショナルなスキルであることは、間違いないだろう。
今度、外人さんに「貴方の特技は何ですか?」と聞かれたら「信号回路の理解力だぜ!」と回答してみよう。言語、国籍や国境を超えて‥信号は繋がり合えるはずである。
先日、録音の為、大阪に出向いた際、スタジオ内のパッチ盤を見ていて思い出した、この話。そのスタジオでは、配線から機器の接続までアシスタントの方がやって下さって至れり尽くせり状態。
自ら配線するチャンスを失い、私のインターナショナルなスキルは埋もれていくのであった。