先日、隊長の友人から、とある相談を受けた。
「娘が、ライブやコンサートなど音楽に携わる仕事がしたいと言っていて‥といっても、業界の成り立ちや、仕事内容について知らないことがたくさんあるから話を聞いてみたいと言ってまして、一度、会ってお話を聞かせてもらえないでしょうか?」
うーむ。コンサート制作やイベント運営の経験はあるものの、うちみたいな弱小自営業でも大丈夫か?と心配になる私達。
でも、確かに音楽関連の仕事をしていることに間違いはない。
それに、音楽業界に就職を希望している就活生と話す機会はそうそう無いし、お会いすることにした。
就活生は社会学専攻
そして、当日。
よく考えてみれば、お顔を知らなかった。
めっちゃ今風のギャルだったらどうしよう‥とドキドキしつつ、待ち合わせ場所に現れたのは、笑顔が優しくて、とてもかわいらしい女子大生。
とりあえず、カフェへ入って自己紹介。彼女Iさんは、大学の社会学部に通っていて、専攻は社会学。
ちなみに社会学というのは‥
今は、「メディアに関する様々な事柄を、社会学的に勉強・研究」しているとのこと。現在の研究課題は「男性アイドルグループを取り囲む現象」、ムーブメントを社会学的に解明しているそうだ。
男性アイドルグループが起こす社会現象のメカニズムを探る‥なんて面白い着眼点。
研究内容に興味津々になりかけた私達だったが、今日は、彼女の希望で設けられた時間‥私達が話す側だったということで、泣く泣く断念。
コンサートの現場の様子を少々
こちらも自己紹介がてら、弱小自営業が行うコンサートの運営や制作や、色々な現場で得た経験、周りから聞く業界の話を少々。
コンサートひとつとっても、会場(ホール)のスタッフ、プロダクション、レコード会社、プロモーター、イベンターなどなど、色々な職種がある。
制作面では、会場の予約から始まって、広報、スタッフの手配、本番終了までの流れなどから、技術や舞台の話、また、予算と収益についてなど、お金の話もしていった。
すると、「あぁ、それ考えたことあります。今日は何人入って、チケット代は幾らで・・でも、経費は分からないですね。」と、Iさん。
※会場の座席数xチケット=?
Iさんはコンサートが好きで、たくさんのアーティストのコンサートに行っていた。
私達は、今でこそ「会場のキャパ(収容人数)が何人で、チケット代は幾らで、会場費、スタッフにかかる費用は・・・」と予算と収益についても考えるが、学生時代にコンサートへ行って収益を考えるなんて‥した覚えがない。
夢をもって音楽業界を目指す若者に話すのは一瞬ためらいがあったが、正直‥楽な仕事ではないことも伝えた。
リスは、専門学校で音楽イベントに携わっていた時、時間的拘束による体力面の大変さ・賃金の安さに直面したそうだ。
新大阪のホールで23時解散して翌朝は6時集合、一日中走り回ってヘトヘトな上、滋賀からの通学。何日か続くと‥さすがにキツく、イベントの内容は覚えていないが、しんどかった記憶だけが残っているそうな。
Iさん「そうなんですよね。私、体力がイマイチ無さそうなので、心配です。」と、素直な気持ちを話してくれた。
すでにイベント運営者?!
イベント運営の話をしていく間に「実は、今、大学内のイベントの実行委員をやってまして・・・」という言葉がIさんから出た。
なんと、すでに入学した当初から、イベントの実行委員をやっているそうな。
担当しているのは、企業から後援や協賛をとりつける部門。イベントの資金を担っている、運営していく上で非常に重要で核になるところだ。
お金に関することは、一番大事だけど、一番大変なこと。
花形のステージ部門などと違って、進んではやりたくない部門だと思う。詳しく聞くと‥
「企業と交渉するのとかは、正直、得意な方では無いので・・身につけていきたいなと思って、思い切ってやってみました。やってたら、意外に慣れるもんですね。」と、少し笑いながら話すIさん。
なんて、たくましい。スバラシイ。
自ら、得意じゃない分野に身を置き、実践している彼女の姿勢と冷静で着実な実行力に、私たちは驚くばかりだった。
何を勉強しておけば、就活に役に立ちますか?
「何を勉強しておけば、就活するにあたって役に立ちますか?」
Iさんからのまっすぐな質問に、私達のつたない業界経験で答えていった。
就活の際の企業リサーチの方法などを話したり、たくさん色んなジャンルのコンサートに行って感じたことをストックすることなどもオススメしつつ、一番は、会社や職種をちゃんと知ることかなと思った。
朝から晩まで忙しく働くことが多い業界なので、「好き」という気持ちがないと、続けるのは難しい。でも、できれば、少しでも働ける環境が整った会社がいいと思う。
その人にしか担えない人物になることは大事だけど、休めない・変わりがいないから無理を重ねる‥という状況は、「やりがい」だけで長く楽しく働くことが難しくなってくる。
今は働く環境が整備されつつあるけれど、まだまだ根性論的な考え方も根強く残っているので、時代に合わせた働き方をする柔軟な発想をもった会社がいいと思う、と私達の意見を伝えた。
そんなことを話しつつも、すでに大学でイベント運営に関わり、社会学という視点から、イベントを取り巻くことを学問的に研究しているなんて‥これほど強力な経験は無いのではないだろうか。
リスが一言。
「合格!私が採用担当者だったら、Iさんは即採用だけどね。」と言い放つ。
音楽が好きで、視野も広く、分析力も行動力もある。
私達が誰かを雇えるような状況であれば、彼女と一緒に働いてみたい。Iさんに話をする会ながら、私達も学ばせてもらった気がした。