昨日、母親が手術を受けました。
親もそれなりの年齢になっておりまして、現在、80代半ばです。
「生命の危機がある。一刻も早く処置を、先生~っ。」という医療ドラマに出てくるような「ナンチャラ癌ステージX」とか、「左右心房心筋弁膜ナンチャラ」なんていう複雑な名称の病気では無く、先生曰く「ムズカシイ手術ではございません」というお話。
そうはいっても、身体にメスを入れる。
「不安だろうなぁ?」と思っていましたが、本人からは、不安な気配はあまり感じられず‥看護師さんと楽しそうに会話をする母。
初めての術前面談
入院時に術前の面談があり、家族勢ぞろいで話を聞くことになった。
我が家はみんな健康体なので、術前面談も初めて。
現在の状態と、手術に関する説明(術式っていうヤツ)を一通り聞き、「こちらと、こちらに署名して、提出をお願いします。」と、いろいろな書類を手渡される。
今回入院しているのは、大学の附属病院。
「出来れば・・・個人が特定されない形で『今回の手術と経過のデータ等を研究に使用しても良い』ということを了承していただけるとありがたいです。」というお伺いがあった。
母「もちろん。そのつもりよー。」
ドライな我が家は、そういうことには寛大だ。
先生の丁寧な説明のもと、面談は進む。
「この部分の縫合は、機器でやります。」なんてことを聞くと「どんな機器なの?」と、病状よりも機器の仕組みが気になる残念な息子。
と、ここで聞いた事のない単語が登場した。
一同「ん?『譫妄』って何?」
術後に出現する症状で、とくに高齢者では起こりやすいもの。良くある症状としては・・・
・チューブを触る/引っ張る行為
・壁に虫が見えたり、実在しない人が見えたり(幻覚)、声が聞こえたりする(幻聴)。
・時間や場所がわからない。手術をしたことを忘れる(見当識障害)
・興奮しやすい。
このような症状が出た時は、家族など良く知った人が傍にいることで落ち着くことがあるので、家族の付き添いをお願いすることがある。
高齢者の手術は、いろいろなコトが起きる可能性があるんだな、と新しい知識を得たのが、今回の面談のハイライトだった。
手術室へ歩いて入る母
さて、手術当日。いつもより若干、口数が多めな母。
ムズカシイ手術ではないと聞いているが、そうはいっても不安なのだろうと思ったが・・・「昨夜から絶食でお腹がすいた。」やら「NHKの朝ドラを見ておけば良かった」等々、話題は手術に関する話は皆無だった。
担当の看護師さんが呼びに来て、いざ、手術室へ。車いすなどは使用せずに元気に歩いて手術室へ向かう。
母「台風が来てますね。台風の最中に手術?」
看護師さん「台風が来る前に、手術は終わっちゃいますね。」
看護師さん「お母さんの年齢なら、車イスで手術室へ向かう方も多いです。歩いて向かわれてるので、スゴイですね。」
母「そう?まだまだ歩きますよ~。」
なんて、足腰自慢が終わったところで手術室へ到着。
「はい、よろしくお願いします~♪」と、元気に手術室へ入場していく母であった。
手術前のベンチで、手術室を示す電気がピカッと消えるのを待ち続ける‥なんてこともなく、待機中に案内されたのは入院中の病棟のロビー。
ドラマでしか知らない病院の様子も、現実は色々と違うのねーと、またひとつ学習。
術後ケアはIT&自動化?
予定の手術時間から、少しだけ早く終了して、母は無事に病室へ戻ってきた。
先生の手術後の説明では「手術は無事に終了して、今後は合併症が起らないようにケアしていきます。」とのこと。
その言葉通り、頻繁に看護師さんがやってきてくれる。
体温と血圧、容体の確認だ。体温、血圧は、いちいち記載&入力することも無くIT化されていた。
壁にかかっているパネルに、体温計と血圧計をかざすだけで、数値が転送されノートパソコンのグラフに自動反映されるのだ。すごい。
そして、足元には見たことも無い医療機器。たまにシュ~シュ~と空気が抜けるような音が聞こえてくる。
パネルに記載されているのは、Kendall SCD 700という機器名。
これは、逐次式空気圧式マッサージ器というもので、足底部やふくらはぎを機械的に圧迫・弛緩することで血流を生じさせ、深部静脈血栓(DVT)のリスクを低減するための逐次式空気圧式マッサージ器(フットポンプ)なのだ。
そういえば、術前面談で「血栓症(エコノミークラス症候群)の心配がありますので、起こらないように注意を払います。」という話があったのと思い出した。いやはや医療はすごい。
驚きの手術の感想
今日も、お見舞いへ。
手術の傷の痛みはあるようだが、経過は順調。
身体は少し動いたほうがいいと言うことで、朝から病棟内を散歩して、看護師さんにびっくりされたらしい。
リスが手術を労いながら、全身麻酔はどうでした?と尋ねる。
「口元にマスクをあてられて、手術室の天井がぐる~と回ったかと思ったら、もう病室で寝ていた。」と説明する母。
そして、次に手術室の中の様子を教えてくれる。「一番ビックリしたのはね‥」と前置きをしたと思ったら、
「手術室にいた看護師さん5~6人が‥これがまぁ美人なの!ミス・ユニバースの会場かと思ったわ。」
なんとも美容師の母らしい視点。
「いい先生だし、看護師さんは美人&素敵な男性が多くて、本当に良かった。」
今日から食べることを許可されたヨーグルトを口に運びながら、そう流暢に話す母。
譫妄(せんもう)の心配も皆無だった母、順調に回復中です。