珍しい野良猫
お山では、多くの動物を見かける。
一番多いのは、ダントツで鹿。大きな角を持つ鹿から、小鹿のバンビまで。そして、うさぎ・イタチ・リス・アナグマ・イノシシなど。
リアルピーターラビット
知人は我が家周辺を「野生の王国」と呼んでいる。野生動物は家の周りに多いが、野良猫はまずいない。
会話で遭遇率を表すと‥
普通「帰り道、大きな角の鹿がいたよー。」「ふぅ~ん」
驚き★「うさぎを見かけたわぁ。」「どこでー?」
驚き★★「家の前にアナグマがいたで。」「へー昼間なのにねー」
驚き★★★「今日、野良猫がいたんよ!!」「えっどこに!どんな子?!」
これがうちの日常会話。
民家が少ないお山では、お魚咥えたドラ猫~♪みたいに食料を民家から拝借することもできない。野良猫が暮らすのには過酷な環境なのか1年に1回、いや2年に1回見かけるかどうかという程度。
そんなお山に昨年5月末、突如白い猫が現れた。
それが、全てのはじまり。
観察期(5~8月)
少し小柄で華奢な白い猫。
家庭ごみも見当たらない環境で、あの猫は狩りだけで生きているのだろうか。
お腹空いてないかなぁ。。
試しに玄関の前にご飯を置いてみよう。と、*カリカリを置いてみたら、次の日なくなっていた。
*ドライのキャットフードのこと。
猫が食べる時の音から”カリカリ”と世間一般で呼ばれている。
あっ食べてる!と嬉しくなったものの、本当にあの猫が食べてるよね‥とよぎる不安。
調べてみると、庭先に置いていたキャットフードをアナグマやたぬきが食べていたという事例を発見。
まさか‥たぬき様?!
野生動物にご飯を提供していたとしたら…喜んでいる場合じゃない。ここは調査してみようとビデオカメラを設置して、観察してみた。すると‥
おそるおそる近づいて、カリカリを食べる白いネコ。よほどお腹が空いているのか、びくびくしながらも全部平らげていく。
よーく見たら、耳が片方まっすぐに切れていた。
するどいキャッツアイ
去勢避妊をしている猫だとわかるように、耳をカットすることは知っていた。それは、「桜カット」と呼ばれ、桜の花びらのようにV字にカットされたもの。
野良猫の去勢避妊について、詳細に調べると、まっすぐ切る「1文字カット」もあることが判明。そして、オスは右耳、メスは左耳に印をつけるらしい‥おそらくこの猫は避妊手術をしたメスだ。
どんな経緯でここにやってきたのかはわからない。
人馴れしている様子はなく、少しでも近づくと‥「シャァ~シャァ~」と威嚇してくる。
車の下は安全地帯
過酷なお山での生活を想像する私達。
お腹が空いた時はうちにおいでと、野良猫用のエサ入れが常設されることになった。
へっぴり腰 / 食べながらも警戒中
名前が無いのもどうかと思い、その白い毛色から「ハク」と呼びことになる。漢字で書くと「白」。なんとも安直なネーミングである。
共存期(9~11月)
1~2日来ない時もあるけど、ほぼ毎日ハクは来るようになっていた。
未だへっぴり腰
去年は豪雨も多かった。
大雨の日は来なくて、3日ほど経過して小雨になるとやってきた。水が嫌いな猫が多いが、小雨の中を歩く野良猫の姿はたくましい。
いつしか、私達が玄関から出る物音がすると、どこからともなくやってくるようになる。猫の聴力、恐るべし。
ハク~と呼ぶと鳴き声だけ聞こえたので探してみると、木の上にいたこともあった。運動能力は高いようだ。
木の上から見張っている?
相変わらず、シャアシャアと怒っていたが、知らぬ間に目の前でカリカリを食べるようになっていく。
夏の時期、気になったのが蚊。何匹もハクの周りにまとわりつく。
追っ払ってあげようとするのだが、その動作を誤解されて、猫パンチを繰り出されたこともあった。
せめてものと、玄関先に蚊除けを吊り下げてみるも、全く効果なし。そりゃ森林だらけの山に、ちっこい蚊除けが効くわけもない。
だったら、首の後の皮膚部分に垂らすダニ・ノミよけの薬だけでもしてあげられないかなと考えるも、まだ触れることもできないのに到底無理な話。野良猫の警戒心の壁は高いのだ。
気安く近寄らないで
出会えた時には、ひたすら話しかける。
お天気の良い日は、スタジオ前で一日昼寝をしていることもあった。
私達について「ご飯をくれて害はなさそう」と少しづつ認識してくれている雰囲気になったのは、秋もだいぶ深まった頃。
この頃「にゃーん」と少し気を許した“甘えた声”が聞けるようになった気がした。
しっぽもピンと上向きに
接近期(12月)
昨年から今年にかけては暖冬の予報もあったが、お山の気候は気まぐれ。
雪が降ると30~40cm積もることもある。そうなると数日はとけない。
その時、ハクはどうなるだろう。
どこかに隠れて寒さをしのげても、さすがに積雪の中を歩くは無理。
リスは雪が降ったらハクはどうなるのか、ずっと心配していたようだった。
もしもの時は、玄関で過ごせるようになったらいいなと少しづつ対策を行うリス。
「いやいや、野良猫が雪の時は玄関で過ごします~♪なんて、どう考えても無理やろ」とは隊長談。
リスの『ハクの玄関シェルター計画』が始まった。
第一段階:匂い付けフリース作戦
まず、玄関先にフリースをいれたダンボール箱を置いてみた。
ネット情報で「自分の匂いがついたものは安心する」とあったので、玄関内に入った時に使えるアイテムになるはず。フリース入りの箱の中で、寒さを少しだけしのげるようになったハク。雨の日は利用してくれる率が高かった。
第二段階:カリカリ誘導作戦
次に、玄関エリアの警戒を解くため、カリカリをおいてみた。
さすがに、いきなり玄関でエサを食べるは無理だろうと、だんだん奥へ。いつしか、警戒心はあるものの、玄関でカリカリを食べるようになった。。
第三段階:ここは暖かい場所でっせ!アピール作戦
玄関先のフリース入りのダンボールは、気に入ってくれた様子のハク。
次は玄関内に足元ヒーターをつけて、ここは暖かい場所だよ~とアピールするが、リスの思いはまったく通じず。食べたらすぐ外へ出ていく。
それでは、またあした
それでも、試行錯誤しながら遂行していくリス。めげない強さは、いつものこと。
12月も半ばに差し掛かった頃。
足をふみふみしながら「にゃーん」と鳴いたり、突如、スリスリ体を寄せてくるようになった。
目の前でゴロゴロするハク
出会って約7か月目。
ご飯を食べている時なら、背中を撫でられるようになり、どんどん近づく距離。
手からカリカリを食べるハク(※動画より)
そして年末に・・・雪が降った。
雪の日の保護
♂福助 / ♂黒助
うちには、4歳になる2匹の猫がいる。
夏頃、予防接種で獣医さんを訪れた時、ハクのことを相談していた。
子猫同士ならまだしも、先に住んでいる猫(先住猫)のいる環境に保護した野良猫を飼うというのは、病気の有無・相性をはじめ、双方にストレスとなる可能性などから、とてもムズカシイと聞いていた。
「たまに現れた時、かまってあげる距離感ぐらいがちょうどいいんじゃない。」というのが隊長の思考だ。リスは「交通事故に合うかもしれない。蛇に噛まれるかも。」と取り合わない。
まとまった雪が今季初めてふった年末のある日。
この日は、昼間から降雪。隊長は、朝から収録の仕事で外出中だった。
このまま降り続いたら、お山に帰れないかもしれないという様相だった。隊長がお山に帰ってこれないことよりも、姿を見せないハクを心配するリス。
辺りが暗くなった頃、鳴き声が聞こえた。
顔を汚して登場したハク
積もった雪に足を埋もらせながらやってきたハク。暖めた玄関にいれてあげて、カリカリをあげる。
夜はまだまだ雪が積りそう。
今しかチャンスはない。
そう思ったリスは・‥そっと玄関の扉を閉めた。
突如、玄関に閉じ込められたハクは、最初「ビャービャー、ギャーギャー」と鳴き騒いだ。
野良猫にとって、保護されることは幸せかどうかわからない。
自由に外も歩けないし、思うままに過ごせない。ただ、雨風防げる場所でご飯を食べて、交通事故の心配はないはず。
ハクと話せるわけではないので、どれだけ想いを巡らせても、結局、人間のエゴ。
もしものもしも。
どうしても家に馴染めなかったら、予防接種とダニ・ノミ予防だけでも‥と思い、突如閉じ込められて泣き叫ぶハクをなだめる。
すると、しばらくしたら、ハクの様子が急に変わったのだ。
そこから1週間。
ハクとの壮絶な日々が続く‥来週は「保護してからの一週間」編をお送りします。
待っておりました!ハクちゃんのその後。そうなんや、フムフムと読んでおりましたら、エエところでエエ終り方‼️ く~ですわ。来週まで待ちます。
Yukiさん。
そうなんです~ゆっくり時間をかけながら、日々コミュニケーションを育んでいました。
ハク小さいですよ。そして、軽い(笑)また会いに来て下さい^^♪ 来週もどうぞまたお楽しみに~!