私流エンジニアへの道

私流エンジニアへの道

Road to Recording Engineer

「ただの録音好きな私」から、
「エンジニアの私」になった第一歩は、アメリカ留学。

20代の後半、私はアメリカの専門学校へ1年半通った。
仕事も覚えて楽しくなると言われる働き盛り真っ只中、突如アメリカへ渡った私。

海外留学そのものにも以前から興味があったし、年齢的にもこれがラストチャンス?とばかりに思い立ち、本場?でのレコーディング技術を学ぶ為とかなんとか、自分に追い打ちをかけてサンフランシスコへと旅立ったのであった。

少々古い作りの学校ではあったが、電気回路の知識~レコーディングの技法~実習までのカリキュラム、生徒の年齢層は幅広く10代、20代~そこそこ歳のいった方まで、老略男女国籍問わずの生徒が在籍して学んでいた。

その当時の常識としては、一人前のエンジニアになるには、専門学校→スタジオの使いっぱしり→アシスタントエンジニア→チーフエンジニア→スターエンジニアというのが成り上がりのルート。

この道筋は、日本もアメリカもあまりかわらなかったと思う。

ただ、「アメリカの方が過酷だ」という説もあった。
使いっぱしりさせてもらえるなんてのはまだいいほうで、数か月スタジオの事務所にただいることしか許されず、事務所の掃除を繰り返すだけの日々を過ごしていた…という話もちらほら。

その話を聞いて、楽観思考の私も「いや~これは果てしないな…」と思うばかりで、「千里の道も一歩より」なんていう言葉は、どこかに置き忘れて、遠くを見つめるばかり。

そんな時、衝撃的な話を耳にする。

Start Your Own Business

専門学校の生徒に、マーク(確かそんな名前だったはず…ビルゲイツ風のアメリカ人)という男性がいた。
年齢も30代後半(いや40代?)で、若者に混ざると、おじさんと言われる部類のマーク。

彼は一期下のクラスにいて「Youは、音楽ソフトは何かさわれるの?」みたいな会話をした記憶はあるものの挨拶をする程度で、いわば顔見知りという間柄。

ある日、マークの同期生から…
「マークって、この学校を卒業したら、スタジオを始めるらしいよ。もうすでに、スタジオ用の物件を抑えているらしい。」という話を聞く。

「修業期間」「実務経験」も無しに「卒業に合わせてスタジオ設立&起業」みたいな話は、初めて聞くエンジニアルート。何かと下積みの苦労話がはびこる中で、鮮烈的な衝撃だった。

そう、ショートカットが好きな私にとっては、ある意味「いきなりやってしまう」という新しいルートマップの存在を知ったような、そんな気分。

「修業期間」「実務経験」無しといっても、マークにとっては、学校に来ることが「修業期間」であり「実務経験」だったのかもしれない。もしかしたら、これまでにもエンジニア経験が少しあって、再勉強に来ていたのかもしれない。真実はわからないけど、

マークが示した新ルートマップは、十数年後‥私のゆく道を照らすヒントになるとは当時知る由もなかった。

専門学校を卒業した私は「アメリカの音楽業界に旋風を巻き起こすぜ!アメリカンドリームを手にするぜ!」なんてことも無く、サンフランシスコ国際空港発のユナイテッド航空伊丹行きにのって帰国の一途につく。

You.. Too much Old.

帰国後ほどなくして、東京のとあるレコーディングスタジオがアシスタントを募集していたので応募した。書類選考が通って面接へと進むこととなり、一路東京へ。

大手のスタジオでの面接は、想像以上のアウェイ感が待っていた。

まず「20代後半で実務経験なし」ということに対して、あからさまに冷ややかな対応。

「勤務時間が不規則だけど大丈夫かな?」とか、「アシスタントにしては、ちょっと年齢が高めだけど、年下のエンジニアの下につくことになっても大丈夫かな?」だとか、”君、キャリアのスタートが遅すぎ感” 満載の質問に、既に飽き飽きしていた。

年功序列と型にはまったエンジニアルートを前に感じたのは…面倒くさくて、ややこしい。
これが正直な気持ちだった。

この面接をきっかけに、レコーディングエンジニアへの道は、早くも一旦終了モードとし、昔、勤めていたゲーム開発業界へ戻ることにした。

その一方で…いつか自分の思うままできるスタジオを作ろう!と、心のリマインダーに登録しておいた。

仕事もそれなりに順調に進み、開発に携わったものがまぁまぁヒットしたなんてこともあり、その結果、山奥の元陶芸の工房だった中古物件を購入するにいたる。

無駄に広い元陶芸の工房を前に、昔、登録してあったリマインダーからのお知らせがやってきた。

「自分の思うままできるスタジオを作ろう」

元陶芸の工房は、少々雑なつくりだがスタジオへと形を変えた。
これがstudio untrapの起源。

私のレコーディングエンジニアとしてのキャリアは、このスタジオを始めた時からスタート。
「修業期間」「実務経験」無しのエンジニア…気づけば、私もマークと同じ道を歩んでいた。

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